2023.10.09 17:00~ at 新宿ガルバホール closed
本公演は延期となりました。
Volume | 001 |
Title | GARBA |
Date & Time | 2023.10.09 16:30(Open) 17:00(Start) |
Place | GARBA HALL Shinjyuku.Tokyo 東京都新宿区西新宿6丁目21−1 アイタウンプラザ Bー103 TEL. 03-6279-4225 |
Capacity | 90 |
Price | 5,500yen / 2,200yen Ticke Heare |
Player | 鈴木 孝彦 Takahiko Suzuki (P) 内山 侑紀 Yuki Uchiyama(Vo) 中野 重将 Shigemasa Nakano(Vo |
PlayList |
※演奏曲目は予告なく変更することがあります。 |
2023年10月9日
この日、サトムは生まれて初めてのコンサートに訪れることになった。
一緒に行くのはサトムの父親である。
紡績会社を経営する厳格な父親は自分にも他人にも厳しかった。
これまで父親にどこかに連れて行ってもらうことなどほとんど無かったが、聡明なサトムは多忙な父親を理解し幼少期から自ら父親と関わることを諦めていたのである。
嬉しいはずの父と一緒のコンサート。
しかし、サトムは素直に喜ぶことができなかった。
月日は二人の距離を遠ざけ、サトムはあまりにも父親の事を知らなすぎたのだった。
サトムは素直に喜べない自分が嫌だった。
「ずっと僕が期待していたことなのじゃないのか?
本当はうれしいのだ。飛び上がりたいくらいだ。
こんな日が来るなんて。。
でも、どうしたらこの気持ちを父に伝えられるのだろう?
僕は本当は音楽が大好きなんだ。父はそのことを知ってくれてたんだろうか?
だから、今日このコンサートに誘ってくれたのだろうか?
この気持ちを素直に伝えたら父は喜んでくれるのだろうか?
いや、これまでのように本当は僕のことに関心など無く拒まれるのでは?
そうなったら辛い。悲しい。そんなの嫌だ。絶対に嫌だ。
だったら何も言わない方がいいんだ。
僕はこれまでいっぱい諦めてきているんだから。。。」
複雑な思いはサトムの頭の中をただ堂々巡りするだけだった。
心が落ち着かないサトムは「何故?僕はここに居るのだろう?」とまで考えてしまうのだった。
そんな感情を抱えたまま二人を乗せた車は新宿ガルバホールへと到着する。
そしてサトムは薄暗い会場の席に静かに着くのだった。
すると、どこからともなく聴こえてくるピアノの音色。
「あれ?もう始まったのか?」
初めて聴くはずのピアノの音が何故かとても心地良い。
ふと、周りを見渡すと新宿ガルバホールの客席に居たはずのサトムはイタリアの教会の椅子に座っていたのだった。
そして、その椅子は幼いころいつも祖父に手を引かれ連れて行ってもらっていたあのローマの教会の椅子のようでもあった。
最初”儚げ”だったピアノの音色はさながら人の”足音”のようにも感じられ段々と一定のリズムで聴こえてくる和音は”足音”が少しずつ強く響いて来るようで急に怖くなったサトムは、これが夢なのか?現実なのか?確かめるようにピアノの音と自分の鼓動を重ね合わせてみるのだった。
するとどこからか美しい声が、、、
その声はだんだんとサトムへ近づいてくる。
声の方を見上げると?燭を手にした女神がどこかで聴いたことがある優しい旋律を微笑みながら歌っていた。
女神の向かいには気品に溢れた風格の王子が静かに且つ優しく”アヴェ・マリア”を歌い始めた。
二人の歌は、まるで不安に満ちたサトムの心に寄り添い、癒すかのようにとても暖かかった。
すると、サトムの目から自然と涙が溢れ出はじめた。
「なみだ?」
最初からこの状況を呑み込めないサトムだったが、そんなことはお構いなしのように涙が溢れ出て頬を伝い止まらなかった。
「これは夢なのか?」
けれど、こんなに心が穏やかで優しい気持ちになれたのは。。
幼い時に音楽家の祖父と過ごしたパリでの生活を思い出すサトム。。。
「グランペール(grand-pe’re)」
「もう一度、会いたいよ」
祖父は今はもういない。
夢だと信じたいサトムは、今の教会でのこのひと時は夢の中だと確信した。
そして、優しさに包まれたままの思いに耽るかのように深い眠りに入ろうとした。
と、その時!
突然けたたましく鳴り響くパイプオルガンの音!!
サトムは今までの穏やかさが急に激しさへと変わったことに驚くと共に、これまでのことが夢ではなかった事にも驚いた。
そして、激しく動揺するのであった。
“オペラ座の怪人”のあの有名なメロディが鳴り響く中、ステージ(舞台)はオペラ座の怪人のワンシーンの中へと移り変わる
そして大舞台は、静かなイタリアの教会からパリのオペラ座。。。
オペラ座の怪人の世界に浸る間もなく、又、舞台はニューヨークのジャズライブハウスへと目まぐるしく移り変わる。
次々と動転するサトムの夢の中のような魔訶不可思議な旅は音楽が誘うガルバホールの魔法なのだろうか?
~父親との関係~そのことで悩んでいたサトムは少なくとも今はもうここにはいなかった。
世界中の様々なジャンルの音楽に触れ、その楽しさ素晴らしさに魅せられ一緒に歌い、一緒に踊り、心から楽しいと感じ微笑んでいたのだ。
ガルバホールの魔法が解けたとき不安や悲しみに対して、諦めの気持ちや後ろ向きに考えていたサトムのその内面は変わっているのだろうか?
サトムを最後に待ち受けている場所はいったいどこなのか。
これは報われない悲劇なのか。
希望の光に満ちた未来名のか。
新宿ガルバホール
ここは迷える人々を本当の自分へ導いてくれる不思議なホール
Player
鈴木 孝彦 ピアニスト、作曲家
2019年、ピアノソロアルバム「イヌとひまわり」全国発売。タワーレコード渋谷店 CLASSICAL ウィークリーランキング 第1位。TSUTAYA イージーリスニング 月間ランキング 第1位。インストゥルメンタルロックバンド「PianoBassWorld 」ではレーシングチーム チームルマン公式テーマ曲集「Team Le Mans Mix」などを手掛ける。
別名「うにピアニスト」としてはX JAPANの「ART OF LIFE」の演奏動画がYouTubeで大反響を呼び、現在までに関連動画は計400万回以上再生されている。
内山 侑紀 オペラ歌手
国立音楽大学演奏学科声楽専修卒業。東京音楽大学大学院声楽専攻オペラ研究領域修了。サントリーホールオペラアカデミー修了。二期会オペラ研修所第56期マスタークラス修了。第2回ウィーンオペレッタコンクール第3位。 オペラでは「愛の妙薬」アディーナ、「夕鶴」つう、「リゴレット」ジルダ、「あまんじゃくとうりこひめ」あまんじゃく、オペレッタでは「こうもり」アデーレ等を演じる。
中野 成将
武蔵野音楽大学卒業、2005年兄弟ら6人で結成した[GUNSHY](ガンシャイ)のリードボー カルとしてデビュー。作詞作曲を担当、ファーストシングル「ボールの行方」がマスターズ甲子園2006テーマソングに使用される。09年からメンバーの一人リュウイチと[SUN]を結成、映画音楽プロデュースの依頼を機に2月8日に単身渡米、ニューヨークを拠点にアメリカでの音楽活動を開始。